自閉症の子供の成長の追体験~天咲心良さんの「自閉症を生きた少女 小学校篇」を読みました

自閉症スペクトラム障害(ASD)と診断された女性の小学生時代の自伝的小説。

主人公ココラちゃんが、家族とのひずみや障害に対する無理解により先生からも拒絶されイジメにも遭いながらどんな風に成長していったか、がとてもリアルに描かれています。

読み始めたら止まりませんでした。
憤りや哀しさや驚きやたまに笑いもあって、とても吸引力のある作品でした。

2つの視点を行ったり来たりしながら読んでいました。簡単にですが、感想をまとめます。

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ココラちゃんの周りの視点

小説の中では一貫してココラちゃんの視点で話は進んでいきます。が、決して彼女の視点のみの押し付けではなく、周りの状況も描かれています。

明確な時代は判りませんが、当時はまだ今ほど「発達障害」が認知されていなかった頃でしょう。

そんなとき、入学した小学校の教師は和を乱す少女を「指導」の名のもとに嘲笑の対象に晒します。そんな雰囲気に流されるように、他の生徒たちもイジメのような行動を取ります。

もし、わたしがココラちゃんの同級生だったら

わたしは小学生の時は八方美人な「良い子」だったので、先生の言うことは全て守らなければならないし、友達に嫌われることも悪いこと、だと信じて疑っていませんでした。

(わたしの視点から見て)突飛な行動をするココラちゃんのことは、作中にいる同級生の多くの様に、イジメはせずともただ遠巻きから見ていたことでしょう。
他の子のイジメ行為に対し「かばえなくてごめんね」なんて涙を流しながら学級会で訴えている自分が目に浮かぶようです。

大きな宿題を貰った

イジメは当然ダメですが、子どものわたしがココラちゃんの同級生だったらどうしたら良かったのでしょうか

更に、将来自分の子どもを持ったとき。

子どものお友達にココラちゃんがいたらどう接するように話をするべきなのでしょうか。
わが子だったらどのように子どもの心に接したらいいのでしょうか。

答えのない宿題だと思いますが、過去ここまでリアルに考えさせられたことはありませんでした。

ASDの内側の視点

この小説の最も素晴らしい点は、自閉症スペクトラム障害(ASD)当事者の視点が克明に描かれていることです。
小説とはいえ、資料的な価値もあるのではないでしょうか。

文中にASDの直接的な症状である一次障害と、間接的に発生する二次障害の解説が挟まれていて、ASDについて知識がなくても読み進められるようになっています。

 なぜ、忘れ物をするのか。

 なぜ、授業中立って歩き回るのか。

 なぜ、人を傷つけるような言葉を発するのか。

結果だけ見れば非難されることも、この小説の中でココラちゃんの論理を知ることで「なぜ」の部分が理解できるようになります。

理由が判ると、注意の仕方も変わってきますよね。

心の成長の喜びを共感

幸い、優れた教師や大人との出会いと、ココラちゃん自らの気付きのお陰で、心理状態も落ち着き成長していきます。

  • 会話は、自分の考えを伝え相手の考えを聞くことである合理的な行為であること。
  • ひとの動きも感情を代弁する重要な要素であること。

5年生になって、やっとココラちゃんは気付くことができます。

ココラちゃんの心の成長がガイドラインになる

あなたはどのようにあなたの心が成長したのか覚えていますか?

わたしは覚えていません。

母国語は文法を知らなくても話せるように、心もいつの間にか(それなりに)成長しているものなんですよね。

わたしは、うつで1年ほどほとんど誰とも会わない日々を過ごしていました。
もとから空気が読めないタイプですが、この1年のブランクが大きく影響して、社会復帰した今は更に他人との関係・距離の測り方が判らなくなってしまい、とても困っています。

ココラちゃんの成長を文章によって追体験することによって、心の変化のプロセスに改めて気付くことができました。
大人になった今も再び同様に歩めば良い、そんな風に感じることが出来ました。

作者に感服

ご家族との関係、学校生活のこと、辛い経験を微細に入って書くのは大変なご苦労や葛藤があったことだと思い、作者さんに感服です。

わたしもADHDの診断の準備に、と思って幼少時代のことを振り返ってみていますが、とても難しくしんどいことだと感じています。
だからこそ、ここまで細かく綴られていることに驚きを隠せません。

ASDを持つ子の代弁になる

小説の中のココラちゃんのように今も苦しんでいる子どもたちが居ると思いますが、彼・彼女らに自ら「なぜ、そう行動するのか」を説明してもらうのは困難なこともあるでしょう。

だからこそ、この本が、彼・彼女らの代弁者になってくれるのではないかと思います。

今、困っている子どもたちの周りのお友達や大人たちに是非読んで欲しい一冊です。